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第853回 住宅問題の変化-その1-

(2019年1月24日)

最近、中国の住宅政策に大きな変化が生じ始めています。「住宅とは本来住むためのもので、投機の対象ではない」という言葉は、2016年から始まった第13次5カ年計画の中でしばしば登場してきましたが、このコンセプトに沿った改革がなお一層明確に盛り込まれた調整政策が打ち出されたのが2018年春の全人代でした。では、2016年当時の問題認識はどういったものだったのでしょうか。
同年春の全人代前の中央経済工作会議ではまず、「戸籍人口の都市化率を高め住宅制度改革を深めるために、農民出稼ぎ労働者の市民化を進め、有効需要を拡大し、需要と供給の関係をスムーズにし、在庫を一掃し、住宅市場を安定させなければならない」とし、農業からの転業人口など非戸籍人口に就業地で戸籍登録させ、住宅購入あるいは長期賃借の方向へ誘導する方針が打ち出されました。当時、既に7憶7000万人が都市に住んでおり、常住人口から見た都市化率は全人口の56.1%に達し、一部の中小都市では既に農民出稼ぎ労働者の住宅購入量が全体の30%前後に、県都レベルでは50%以上にもなっていました。この点から見れば巨大な潜在住宅需要があるわけですが、しかし、投機目当ての資金の流入によって住宅価格が高騰する一方、都市に戸籍がない彼らに対する社会保障は貧弱で、医療・教育にかかる費用が負担能力を超え、住宅を買いたくても買えない状況に陥っていたのです。
以上のような状況の下で新たに生じた大きな変化が“出租”(賃貸)でした。2016年に政府は「住宅賃貸を奨励し、現有住宅をしかるべく改造し、条件を満たした場合、1部屋単位で賃貸に供してよい」という方針を打ち出しました。この「1部屋単位で」というところがみそで、やたらに細分化して“群租”することで生じた様々な問題にブレーキを掛けつつ、賃貸そのものは奨励する方針を示し、これによって家賃は安く保たれ、この条件の下でならシェアも引き続き可能となれば負担も軽くになります。この方針は6月になって<住宅賃貸市場の育成と発展の加速に関する若干の意見>として発表されました。その中では6つの具体的措置が打ち出されるとともに、2020年には、供給主体が多元化され安定的に運営される住宅賃貸市場システムを形成することが目標として掲げられました。その内容およびその後の今日までの動きはまた次回に。

次回は1月31日の更新予定 テーマは<住宅問題の変化-その2->です。

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