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第907回 PPPの内実-その1-

(2020年2月20日)

2017年にトランプ大統領が登場、翌2018年には制裁関税の実施へ向けた米中の凌ぎ合いやファーウエイ問題が起こったことで、中国は経済発展のペースダウンが不可避になり、その対策として、2019年1月の人民日報には民営経済の活性化を積極的に推進しようという記事が溢れました。       
しかし、それが故に民営経済の育成推進が急速に叫ばれた、と見るのは近視眼的でしょう。重要な産業分野では世界のトップを競う大規模国有企業を育成しつつ、他の分野は、供給側の改革と組み合わせながら民間活力を大いに引き出し、市場化を進める、という基本的方針は習近平政権誕生後、明確に標榜されてきましたし、チープガバメントを目指す方策の一つとして、PPP形式による取り組みも既に2015年頃には珍しくなくなり、水道・地下鉄・高速道路といった日常の公共施設で実施されていました。例えば、重慶市では、2014年時点でPPPプロジェクトは10を数え、その額は1000億元に達していました。2015年の国家発展改革委員会と国家開発銀行による<開発性金融の推進により政府と社会資本の協力を支えることに関する活動についての通知>が、PPPプロジェクトへの優先的融資、融資期限最長30年、利率の優遇を標榜したことは、政府の積極的姿勢を如実に物語っていますし、国務院もまた同年5月に<公共サービス領域において政府と社会資本の協力モデルを普及させることに関する指導意見>を出し、その中で、エネルギー・交通運輸・水利・環境保護・農業・林業・科学技術・住宅・医療・衛生・老人介護・教育・文化など多方面にわたる公共サービス領域に社会資本を参加させ、質の高いサービスを提供する、としました。       
しかし、こういった施策を奨励する一方で、これに警鐘を鳴らす記事もありました。国家発展改革員会投資研究所の呉亜平氏は同年、人民日報に「PPP方式は積極的かつ慎重に」という副題を付けた評論“全面认识政府和社会资本合作模式”を発表し、①PPP方式をある種の融資ツールにしてはならないこと、②公共サービスの公益的目標と社会資本の営利目標はたやすく合致しないこと、③PPP方式は万能ではなく、政府は右から左へと安易に認めてはならないことなど、詳細な警告を発し、注意を喚起しました。       
この続きはまた次回に。

次回は2月27日の更新予定 テーマは<PPPの内実-その2->です。

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