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第914回 新型コロナウイルスと人民日報の報道-その3-

(2020年4月9日)

1月20日付の日本の新聞各紙が、武漢市以外の北京や深圳でも患者が発生したことを告げたころから、この問題が武漢という一地方の問題だけではなくなったことも、人民日報が21日から関連記事の掲載をせざるを得なくなった原因の一つでしょう。同時期、韓国でも患者が発生し、ヒトから人への感染の疑いが深まりました。中国当局が1月12日に、コロナウイルス遺伝子の配列について情報を公開したことは、2002年のSARSの時に3カ月間感染を公表しなかったことと比べると進歩していますが、春節前に混乱が起きないようにと、20日まで情報統制をしていたことは明確で、それが春節期間の延べ30億人と言われる移動に強力な取り締まりが間に合わなかったことに繋がり、更に、世界各地に感染を広げてしまった主要な原因になったことは否定しようがありません。21日に国家衛生健康委員会が新型コロナウイルスを法定伝染病乙類に認定し、春節を控えて最大級の防疫体制を指示しましたが、武漢の出入りが禁じられたのが23日ですから、その間に多くの人が武漢から逃げ出し、また、海外へも避難したわけです。       
1月26日、人民日報は、新型コロナウイルスに関する中共中央政治局常務委員会の開催を一面トップで大々的に伝え、漸く腰を据えて全面的に取り組もうとする政府の姿勢を示し、更に28日には同じく一面トップで習近平総書記の重要指示を掲載、同時に、李克強首相の武漢視察も報じられ、更に2月1日の一面右上では、中央軍事委員会が上記重要指示に対し断固たる支持を表明したことが報じられました。2月4日、新型コロナウイルスに関する中共中央政治局常務委員会の開催がまた一面トップで伝えられるとともに、5日ころからは、外国が中国の取り組みをいかに高く評価しているか、という宣伝記事も増え始めました。新型コロナウイルスに関する中共中央政治局常務委員会の記事はその後も2/13、2/27、3/5付けに掲載され、その間、2月10日、3月2日に習近平総書記が北京(武漢ではない)の現場を視察、3月11日の一面には「人民戦争総力戦」という言葉が躍るに至ったのです。   
なお、人民日報に労働・生産の復活に関する記事が掲載され始めたのは2月10日で、春節後に感染を恐れて労働者が故郷から戻らないことを危惧した措置であろうことが推察されます。感染防止と生産復活の舵取りが交錯した時期と言えましょう。   

次回テーマは<最近のバイオ研究開発状況>です。

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