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第934回 自然災害対策への取り組み-その1-

(2020年9月3日)

一口に自然災害と言っても、地球温暖化による集中豪雨の頻発、大型台風の襲来、それらが引き起こす洪水や土砂災害、竜巻、海面の上昇による被害など様々です。また、日照りによる干害や砂嵐、落雷などによる森林火災もありますし、それらによって引き起こされる病虫害を含む農作物への被害もその範疇に入りましょう。この他、地震による土砂崩れや津波の被害も忘れてはなりません。       
いずれにせよ、近年世界を襲っている異常気象の被害は中国でも深刻で、中でも、6月以降梅雨前線の形成を契機に発生する広範囲な洪水は、毎年のように1億人を超える住民を被災させ、中国経済に大きな打撃となっています。中国では洪水を“一般洪水”(5-10年に一度)、“較大洪水”(10-20年に一度)、“大洪水”(20-50年に一度)、“特大洪水”(50年を超える期間に一度)に分けていますが、大洪水の頻発はこのような物差しを根底から揺り動かしています。洪水に対する緊急対応のランクは、Ⅰ級:ある流域で特大洪水が発生/多くの流域で同時に大洪水が発生/大河の重要堤防の決壊/重要大型ダムの崩壊、Ⅱ級:ある流域で大洪水が発生/大河の一般堤防や主要支流の堤防の決壊/複数の一級行政区や多数の地級市で深刻な洪水が発生/一般中大型ダムの崩壊、など四級に分けられていますが、Ⅰ級対応の必要性が増す中、政府は抜本的な対策を迫られています。   
その対策の一つが、近年の開発で極度に痩せてきた多くの湖沼の復活で、周辺の立ち退きが強制的に進められています。例えば「千湖の省」と呼ばれる湖北省では、すでに2016年に<湖沼による洪水防止と生態環境対策活動を確実に行う事に関する緊急通知>を発し、“退田還湖”、“退漁還湖”といった政策を実行に移しました。湖北省の場合、上流に巨大な三峡ダムがあり、近年、大雨が続くたびに、その安全性について様々な情報が飛び交っています。同ダムを含めた長江中上流のダムの総貯水量は100億立方メートルを超え、万が一、これが崩壊すれば、湖北省が受ける被害は想像を絶します。   
洪水に対する警戒を強化するには、水位を測定する箇所の設置も重要です。新中国成立当初は353カ所しかなかった観測所も2018年には12.1万カ所に増え、ほぼ、全国の河川を網羅する体制が構築されています。次回は国の全体的な防災体制を見てみましょう。   

次回は9月10日の更新予定 テーマは<自然災害対策への取り組み-その2->です。

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