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第964回 人民日報の記事から

(2021年4月8日)

「中国共産党機関紙」、というかしこまった肩書がつく人民日報ですが、胡錦濤時代と比べ少なくなったとはいえ、滋味のある文章も折々掲載されています。今回はそのいくつかを取り上げましょう。       
 まず、2019年1月30日付「王府井の新景観」から。書き出しは「王府井を離れて想うこと久し」で始まる。筆者、鄭栄来は齢80を過ぎた老人で、かつて15年間を王府井で過ごした。筆者がそこで目にしたのは、以前にはなかった5頭の銅製の牛の彫像。農耕民族にとって牛は福、五頭は五福を意味する。筆者はそこに伝統と現代の調和、都市への入魂を感じる。       
 私(三潴)は1977年に初めて中国を訪れてから、毎年数回中国を訪問した。昨年、コロナでそれが途絶えたが、その間、王府井の変遷を目の当たりにしてきた。中国が変わる、と強烈に印象付けられたのは、1980年に王府井の裏通りで、女性が胸に入れるパットを量産しているのを見た時だった。文革時代とは180度の転換だった。
 2021年1月24日には「ピエール・カルダン先生を偲ぶ」という一文が掲載された。この記事の筆者がカルダンに最初に会ったのは1990年だそうだが、カルダンが中国に最初に進出したのは改革開放が始まった翌年の1979年のこと。私が天壇で初めてスカートをはいた女性を見かけたのが1980年だったから、カルダンの行動はまさに中国を先取りしていた。80年代初期、中国への土産で一番喜ばれたのが日本のパンスト・化粧品だったが、1980年代半ばに個体企業経営が認可されるとファッション雑誌が喜ばれ、並行するようにカルダンの中国進出も本格化していった。       
 2020年7月18日付には「円明園:百年の古蓮が再び顔を」という記事が掲載された。2017年に円明園の池の後から発見された種が芽吹き、花を咲かせたのである。「日本の大賀ハスに比べたら」などというのは野暮であろう。円明園は北京の西北郊外に建設された清朝の離宮であり、乾隆帝の時代に増改修もされた名園だったが、1860年に英仏連合軍によって略奪・放火され、廃墟となった。最近、円明園の遺物が海外から帰国した記事も掲載されたが、廃墟で採取されたハスが見事な花を咲かせたことは、中国復興の象徴かもしれない。       
 王府井に腰を下ろすと、40年余りの王府井の変遷が走馬灯のように思い出されてくる。   

次回は4月15日の更新予定 テーマは<老人とIT化>です。

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