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第968回 米中関係を巡る人民日報直近の報道-その1-
(2021年5月6日)
1月21日にバイデン政権が発足して3カ月半ほど経った。その間、米中間にどういうやり取りがあったか、互いの意識にどういう変化があったかを、人民日報の報道も踏まえつつ時系列的に整理してみよう。バイデン政権発足時、中国側に大きな期待があったことは確かである。当時の外交部スポークスマンの記事は「勇気を出して、知恵を出し合おう」というタイトルに、「バイデン就任後に対する中米関係の期待」というサブタイトルを付け、「トランプ時代、非常に不幸な時期を経験したが、両国人民はより素晴らしい未来に期待を寄せることができる」とし、「中米関係で“善良な天使”は邪悪な力に打ち勝つことができる」とまで書いた。2月5日のブリンケン国務長官と楊潔篪と電話会談でもその基調は変わらなかった。中国はその後、春節と全人代に突入し、報道は専ら内政に終始し、目についたのは、2月5日に第5面全面を使い、結党百年記念シリーズの一環として「中米は50周年に新しい扉を開く」と過去の輝かしい協力を強調したこと、2月11日に習近平主席とバイデン大統領が電話で会談し、緊密に連絡を取ることで合意し、「意見に違いがあるのは正常だ。多様性を認め、気候変動・コロナ対策などで協力し、平和共存の道を」と報じたことくらいだった。全人代開催中、3月11日の李克強首相の記者会見でも、「過去数年、米中関係は不幸な時期を経験したが、世界最大の発展途上国と世界最大の先進国には広範な共通利益がある」とコメントした。以上の期間は、トランプによる冬の時代に漸く別れを告げ、バイデン新時代に期待を掛けつつ、バイデン新政権がいかなる対中政策を打ち出すか、を探る時期だった。
しかし、この間、アメリカ側は、トランプのアメリカンファーストによって崩壊しかかった西側の同盟関係の再構築に奔走していた。その結果、イギリスは中国を「経済安全保障上の最大の国家的脅威」とみなして、TPPに加盟を申請。ドイツはメルケル首相が「中国は国際政治システム上の競争相手」だとし、イギリスは年内に空母クイーンエリザベスを、ドイツはフリゲート艦をインド太平洋地域に派遣、フランスは攻撃型原子力潜水艦を南シナ海に派遣すると表明、これによって、「中欧関係は非常にうまくいっている。世界に対する積極的なシグナルだ」(3月8日、王毅外相)と信じていた中国首脳に激震が走ったのである。