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第971回 現在の米中関係

(2021年5月27日)

 激しいやり取りが続くなか、対話チャンネルの構築に向けた動きが具体化しだしたのは4月10日以降である。同日、中国はピンポン外交50周年を記念して、アメリカ総領事館員と卓球試合を行った。この何でもないような記事は、中国が何とかアメリカとの対話の機会を探ろうというシグナルでもある。       
 4月13日の人民日報は、「李克強首相、米国財界首脳と対話」と言う記事を掲載、「ともに衝突を避け協力することで合意、米側、さらなる開放を希望」と報じた。翌14日、ケリー特使が訪中し、中国と気候変動会談を行い、22.23日のアメリカ主宰「気候変動サミット」への協力を要請した。
 こうした動きをにらみつつ、バイデン政権は4月16日の日米共同声明を介して、台湾・香港・新疆・南シナ海問題についての基本的立場を改めて明確に提示し、経済面でも半導体問題を含めた日中の連携強化を打ち出したが、中国側は4月18日に外交部スポークスマンがたった22行の懸念を表明したのみだった。その後4月28日にバイデン大統領が上下両院合同会議で施政方針演説をし、「習近平は専制主義者」と批判、インド太平洋での強力な軍のプレゼンスを維持すること、人権と基本的な自由に対する責任を回避しないことを明言したが、一方で、対中国の競争に勝つが、衝突は望まない、と、敵ではなく競争相手だと言明、この間、4月17日には米中気候変動を巡る共同声明を出し、4月22日にアメリカが主催した「気候変動サミット」には習近平主席も出席するなど、両者の理性的な対応が目立つ。バイデン政権の対中総合政策が姿を現し、中国側もそれに対応する腹を決めたことが窺える。       
 中国側はこの間、4月17日には習近平主席が独仏指導者と電話会談をし、パリ協定での協力を確認、4月20日のボーアオアジアフォーラムでは習近平が「いかなる形の冷戦にも、イデオロギー対立にも反対」としつつも、アメリカ名指し批判は避け、台湾問題にも一切触れなかった。       
 4月23日に中国外交学院蘇浩教授が日経新聞のインタビューに答え「中国政府は日米との連携を望んでいる。中国は日米の敵ではない」と強調したことは、中国側の姿勢を如実に示していると言えよう。       
 当面、中国はRCEPに参加して中国主導の経済圏作りを目指す姿勢を示しており、アメリカ抜きのTPP参加も検討し、更に日中韓FTAにも意欲を示している。       

次回は6月3日の更新予定 テーマは<自動車産業の動向>です。

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