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第979回 現代中国人とプライバシー

(2021年7月22日)

 2017年5月9日、最高人民法院は、同年6月1日から施行される、計13条の<公民個人情報刑事案件処理に対する法律適用上の若干の問題に関する最高人民法院・最高人民検察院の解釈>に関するブリーフィングを行いましたが、その中で、「刑法の関連規定における“公民の個人情報”とは、姓名・身分証明書番号・通信手段・住所・口座番号・財産状況・行動記録などを含む各種の情報である」と規定しました。また、個人情報の重要度に応じて、行動記録・通信内容・信用情報・財産情報は50本以上、宿泊情報・通信記録・健康情報・取引状況などは500本以上、その他の公民情報については5000本以上を違法に取得したり販売した場合は重大事案とする、としました。       
 個人情報で当初問題になったのは、宅配などに記載された住所・氏名・電話番号などでしたが、その後、その内容は、上述の他に、性別・本籍地・学歴・政治思想・趣味・車のナンバー・身体的特徴・結婚・遺伝形質・犯罪記録など多方面に拡大し、同年7月改定の<中華人民共和国測量製図法>では個人の位置情報も法律保護の対象となりました。プライバシー問題は監視カメラに関しても物議を醸しました。全国の学校の、教室はもとより、食堂・グラウンド・宿舎の中の様子まで流出する、商店・マッサージ店、更には各家庭の様子が次々と特定され、映し出される、これではたまったものではありません。更にIoT時代の急速な到来で、ドローン・子供用スマート玩具・ロボット掃除機、なんでも外部に情報を漏らしてしまいます。
 ビッグデータの普及という経済発展に不可欠なツールと個人情報保護は、二者択一とはなり得ず、両立が不可欠です。産業発展という観点からすると、ビッグデータによる個人情報は国家のベーシックな戦略的リソースであり、また、政府にとって治安維持にも欠かせません。しかし、顔や指紋・声紋も個人情報であり、その扱いは慎重の上にも慎重であるべきですが、現実には、17万人もの顔認証のデータがネット上で売り出された事件も発生しました。2021年5月に成立した民法では、企業が個人情報を収集するには本人の同意が必要であるとし、個人情報の保護に真剣に取り組む企業とそうでない企業に対する消費者の選別も次第に厳しくなりましたが、違法アプリによるトラブルは今も依然として後を絶ちません。

次回は7月29日更新予定 テーマは<日常生活のモラル向上>です。

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