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第981回 中国考古学の軌跡とその成果-その1-

(2021年8月5日)

 2019年11月2日、習近平総書記は甲骨文発見120周年に寄せて「甲骨文は漢字の源流であり、中国の優秀な伝統文化の根底を為す」と述べました。翌2020年12月1日発行の<求是>第23期は習近平氏の重要文章として、「中国独自の風格と気概を持つ考古学を打ち建て、悠久の歴史を持つ、広大深遠な中華文明をしっかり認識しよう」を発表、その中で習近平は、中華民族の偉大な復興を実現する精神的糧としての考古学の重要性を強調しました。       
 こうした政治的な後押しもあって、ここ数年、人民日報には近年の考古学の成果を特集する記事が豊富に掲載されましたが、政治的追い風は別にしても、中華人民共和国建国以来今日に至る中国考古学の発展ぶりは実に目覚ましいものです。
 1949年~1970年代末期に到る約30年の間に中国で発見された新石器文化遺跡は6000カ所以上に上ります。仰韶文化を代表する河南省の廟底溝遺跡や陝西省の半坡遺跡、それ以前の約8000年以上前の河南省斐李崗文化はその代表的事例です。80年代以前、斐李崗のような前仰韶文化は黄河流域にしか見られず、黄河中下流域が古代文明の中心と考えられていました。ところが、80年代から90年代末にかけ、中国の経済発展に伴う各種建設工事の進捗に伴い、空前の発見ラッシュが続きました。遼寧省牛河梁の紅山文化遺跡、浙江省の良渚遺跡、山西省の陶寺遺跡など、中原以外で優れた文化遺跡が発掘され、更に2000年以降の発掘と研究により、今から6000~5300年頃、すでに各地に優れた独自文化が存在し、地域間交流も活発化し、知識の共有も進んでいたことがわかってきました。そこで考古学界では現在、史前文化を六大区系に分けるようになりました。
 こうした史前文化発展の中で大きな役割を果たしたのが農業です。2004年に浙江省の新石器時代の遺跡から約1万年前の稲作の痕跡が発見され、その後、湖南省では9000年前、河南省では8000年前の稲作が発見されました。また、北方では北京市で1万年頃の黍や粟の栽培が認められ、8000~7000年前にはそれらの栽培が広く北方地域に広がっていたことがわかってきました。更に稲作地帯では、5500年前頃から石器による生産農具が発達し、水牛による耕作の痕跡も認められるなど生産力が増大したことで、人口が増加、大規模な集落が出現するようになりました。この続きは次回に。

次回は8月12日更新予定 テーマは<中国考古学の軌跡とその成果-その2->です。

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