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第983回 観光業の変化

(2021年8月19日)

 政府の公式統計によると、コロナ騒ぎが起こる直前の、2019年中国国内観光旅行者は前年比8.4%増で延べ60億人を超えました。通年での観光総収入は11.1%増の6兆6300億元に達し、海外旅行者も1億5463万人を数えました。       
 2019年8月、国務院は<文化・観光の消費潜在力を一層喚起することに関する意見>を発出し、9項目の政策を掲げました。その第五に掲げられたのが、テーマ性に優れた、中小規模で特色ある文化観光芸能の開発と、ランク付けに裏打ちされた民宿のブランド化、観光農業や農村観光重点村の積極的な推進でした。2020年春節以降、コロナの蔓延に遭遇して観光に若干ブレーキがかかったものの、早くも同年7月には<観光業の業務再開関連事項についての文化・観光部弁公室の通知>が出され、170日ぶりに団体旅行が解禁になりました。また、2021年1月には更なる観光業の発展を見据え、国が指定する観光リゾート地区に新たに15地区が加えられ、合計45地区(河川湖沼区16、森林区8、温泉区6、海浜区5、氷雪区3、特定文化区5,古城鎮区1,砂漠草原区1)になりました。
 こうした動きを背景に近年ブームとなっているのが “農家楽”と呼ばれる農村観光。1986年に四川省成都市のある農家から生まれた“農家楽”は一時広がりは見せたものの、あまりにプリミティブで下降線をたどり、2000年代から初期のインフラ整備が行われ、近年漸く本格的発展期に入り、様々な取り組みが行われています。その一つがランク付け。山西省は<山西省農村観光模範村の格付けと評価基準>を制定し、2019年6月に、省レベルとしては全国で初めて、100村のAAA級観光模範村を発表しました。同基準は1000点満点(特色ある商品230点、観光設備200点、観光管理190点、経営支援120点、環境衛生100点、総合収益95点、景観の質65点)で、更に40点の加点項目があります。
 “農家楽”と共に発展を見せているのが民宿。2020年7月28日の人民日報に<観光を足掛かりに貧困を脱出しよう>という記事が掲載され、「農家楽+民宿」による各地の貧困脱出事例が紹介されました。2019年時点で需要に対する充足率はまだわずか3%、“90后”が消費の86.2%を占めるその前途は洋々たるものです。当面は、すでに始まったランク付けを梃子に、如何にして質の高い供給を確保していくかが最大の課題となっています。

次回は8月26日更新予定 テーマは<観光業のペットの流行と関連する問題>です。

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