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第1172回 中国旅客機国産化加速
(2025年5月29日)
中国の旅客機メーカー中国商用飛機(COMAC)が製造した中型機C919が処女飛行に成功したのは2017年のこと。翌2018年には28社から815機を受注、その後、2022年7月には6機の試作機がすべての試験飛行任務を無事終えました。その後、同年9月29日、北京で劉鶴国務院副総理隣席の下、盛大に中国民用航空局の型式証明授与式が挙行され、国内での商業運航に向けて大きな一歩を踏み出しました。中国の国産機としては、すでに2014年に地方路線用の小型旅客機ARJ21が型式証明を取得、国内111の都市を結び、282の路線に投入されていましたが、幹線用飛行機C919は客席も158~192に増え、航続距離も4075~5555キロに増えました。2022年には一号機が中国東方航空に引き渡され、2022年11月に開催された第14回中国国際航空宇宙博覧会では、大手銀行系のリース会社7社から300機の注文があり、2023年5月には上海の虹橋空港から北京の首都国際空港へ、初の商業飛行が始まりました。<中国商飛公司市場予測年報(2021-2040)>によると、今後20年間に中国航空市場は9084機が新規に就航、その内C919規模の機体が6295機と、中国民間航空市場の約80%に達するとしており、前途は洋々と言えそうです。
2024年2月、シンガポールで開催された航空ショーにC919が初めてその姿を見せ、10月には同地にアジア太平洋地域事務所を設置、香港にも拠点を設けて、まずは東南アジア向けにセールスを進める方針のようです。ただ、東南アジアに売り込むにせよ、さらに欧米各国に売り込むにせよ、今後、世界に向けて売り込むには、中国の型式証明では通用せず、欧米の型式証明が必要になります。ただ、アメリカにはボーイングがあり、一国主義を標榜するトランプ政権が証明を出すか、また、エアバスを持つ欧州も、中国製EVの脅威に反発が強い中、先行きは不透明感が否めません。また、中国は、EVでは車載電池を始め部品面で優位に立って販売を拡張できましたが、C919はエンジンも欧米製で、部品全体の国産化率も6割程度にしか至っていません。
とは言え、2016年に運航開始したC909(座席数約80の小型機)もC919も、2025年までにそれぞれ800機、1400機の受注を抱えており、更に座席数約280、航続距離12000キロの大型機C929の開発も進行中で、2024年11月にはまず中国国際航空が購入を決定しました。これが完成すれば大型・中型・小型機が勢ぞろいするわけで、今後の発展の基盤が完成します。