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第1174回 ドローンと低空経済―1―
(2025年6月12日)
1930年代からイギリスやアメリカが軍事目的で開発を始めたドローンが、民間で産業目的で発展し始めたのは1980年代のこと。日本でも、新潟のある企業の社長が趣味で集めた小型操縦式ヘリコプターを農薬散布に活用し始めたエピソードがありましたが、その後、現在流行している小型で軽量化された、複数のプロペラが高速回転をしながら飛ぶマルチコプターが開発され、一挙にブームが広がりました。今では産業分野に止まらず、多様な用途が急速な広がりを見せ、小型から超大型まで、様々なタイプのドローンが登場するようになりました。ウクライナ戦争をきっかけに、軍事目的での使用も急速に実用化され、戦況を左右する存在にさえなっています。そんな中、特に注目を浴びたのが、最近公開された中国の無人新型高高度ドローン空母「九天」。軍事専門家の張学峰氏によれば、翼幅25メートル、最大離陸重量16トン、最大積載量6トンという巨大なドローンで、100機のカミカゼドローンを一斉に発進できる能力を持ち、CCTVの報道によると、動力システムはターボファンエンジンを採用、最大飛行高度1万5000メートル、最大飛行速度時速700キロメートル、最大航続距離7000キロメートル、飛行時間12時間以上とのこと。しかも誘導爆弾、空対空ミサイル、空対地ミサイル、対艦ミサイル、巡航ミサイルを搭載できるというのですから、その軍事的有用性は計り知れず、台湾有事でも脅威となるでしょう。
さて、ドローンが大きく脚光を浴び始めたのは2010年代中頃のこと。その頃、世界のドローン市場は、フランスのパロット社、アメリカの3D ロボティックス社、中国のDJI社が3強と言われていましたが、10年後の現在は、DJI(大疆创新科技有限公司)の独り勝ちといった様相を呈しています。2006年に深圳で創業した同社は、有名なPhantomシリーズで一世を風靡し、現在は様々な用途のドローンを開発しています。
では日本のドローン業界はこれにどう対抗しようとしているのでしょうか。2025年の日本企業産業用ドローン生産ランクを見ると、トップはAutonomy社が33.8%とほぼ三分の一を占め、次いで東洋物産10.3%、ROBOZ社10.3%と、それぞれ二桁のシェアを占めています。ドローンの使用範囲が拡大する中、まだまだ、チャンスは無限と言えましょう。