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第1178回 農村義務教育の動向-その3-
(2025年7月10日)
農村教育の拡充では、近年、オンラインによる遠隔授業などさまざまな支援が拡充され、話題に事欠きませんが、そのためにも、教員の充実が焦眉の急になっています。中国では2021年時点で全国の農村に290万人の農村教師が存在していましたが、近年では構造的な欠員状況が顕在化していました。もともと教員の質に問題があるうえに、給与が低く、将来に希望を抱けず、職業としての魅力がなければ、前途は推して知るべしです。そこで、政府は<農村人材振興推進に関する意見>を打ち出し、遠隔地で、教育条件が困難な地域であればあるほど、待遇に気を配り、都市の教員との格差を是正し、教師の流出を食い止める方針を示しました。第14次5ヵ年計画初年の2021年6月、教育部は、2020-2021年の間に、全国で22842名(内、義務教育段階は21635名)の教師を辺境の貧困地域、少数民族地域、旧革命根拠地区に派遣するとしました。これには大学生の教育実習や農村義務教育段階学校教師特設ポスト計画該当者を含みません。期間は一年で、なおかつ延長を奨励するとのこと。また、同年から始まった<中西部未開発地域向け優秀教師育成計画>では、教育部直属の師範大学や地方師範大学がこの方式を採用し、毎年、832の貧困脱出県と中西部辺境県のために1万名程度の師範生を育成するとしました。その結果、2022年全体では、国家レベルで9565人、地方レベルで1853人、合計11418人の学生が同コースに参入し、また、農村義務教育における大学本科以上の学歴を有する専任教員は全体の76.01%に達しています。
こうした動きに合わせ、2022年3月には、国家発展改革委員会が<2022年新型都市化及び都市と農村の発展重要任務>を打ち出し、県都を中心に都市と農村の発展の発展を推進し、都市部のインフラを農村に繰り広げて、公共サービスと社会事業が農村をカバーする方針を示し、都市と農村の学校間で教師の流動をスムーズにし、教育リソースを共有しようという試みも各地で推進されました。中国の農村では、2010年代後半から義務教育の空洞化現象が顕在化していました。出稼ぎ労働者に帯同して村を出る子供たちの急増といった原因と共に、農村の義務教育課程の質に不安を感じる親たちが子供を都市部の学校に通わせる現象も顕著で、都市部の学校の過密化も招来しました。ここ数年の改革がこの動きに歯止めをかけられるかが注目されます。