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第1178回 “谷子经济”
(2025年7月17日)
経済の低迷を脱するために消費を振興しようと、“以旧换新”「買い替え」という言葉が新聞を賑わした2024年でしたが、年が明けてもその必死の取り組みは続いています。最近よく耳にするのが“谷子经济”。英語の“goods”に音を引っ掛けたこの言葉は、「“谷子”(粟の一粒)のような小さな支援や消費」という意味で、具体的には10~15元程度のキャラクター文具や限定カード、二次創作グッズを購入したり、SNSやネットライブでの投げ銭や「いいね」の応援をしたりすることを指します。“谷子经济”の市場規模は2023年の1201億元が、2024年には1689億元にも達しました。この消費需要のターゲットは、俗にいう「X世代」(1995~2010年生まれ。Y世代(ミレニアム世代)に次ぐ世代という意味)です。この世代の特徴は、所得は少ないものの、「推し活」に対する熱意は高く、「ちりも積もれば」でその規模は数百億元に上るとさえ言われています。“谷子经济”という言葉は、政府の経済用語としてはもちろん使用されていませんが、こうした若年層の「情緒消費」を消費喚起政策という文脈の中で支援していることは確かで、その証拠に、2023年の国務院による<消費の回復と拡大に関する措置>にはすでにZ世代などに向けた「個性化、多様化、小規模化された消費形態への支援」が謳われており、関連記事は最近の人民日報でも増えています。地方政府もこの点を重視しており、例えば、広州市は、二次元フェスや博物館のIPグッズの販売に補助金を出し、成都市では、“谷子经济”を活性化させるために、抖音や快手といったサービスアプリのインフルエンサ―育成に補助金を出して、間接的に谷子经济”の活性化を促進しています。
デジタル技術の発展が深まり、中国ではネットショッピングに参加するユーザー数が、2005年時点で9.74億人にも達しています。その内、90年代生まれ、2000年代生まれのネットショッピング使用率はそれぞれ95.1%、88.5%にも上り、今後も増加の一途をたどるでしょう。デジタル消費という側面から見ても、今後の消費の主役がこれらの年代であることは疑いなく、彼らが好むゲーム産業の総収入額(2024年)は3200億元に達し、プレーヤーの数も6.7億人に達しています。これら若年層のもう一つの消費傾向が“緑色消費”。環境を大事にし、循環利用に敏感なのはこの世代の特徴といえましょう。「青年新型消費」は、今、中国でホットな話題になっているのです。