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第1193回 中国知財権戦略、この2年―その3-

(2025年10月30日)

  個別のテーマを見てみましょう。202年代に入り、目につくのが特許交叉許可協定の広がりです。ファーウエイとOPPO、ファーウエイとシャオミー、バイドウとハイアール、ZTEとVIVOなどはその例で、ファーウエイは既に2022年時点で、サムソンやノキアなど海外企業も含む22社と提携を結んでいます。こうした提携はAIやIoTなどの分野で顕著で、互いの知財を尊重し合い、技術研究に再投資できるメリットがあります。中国が近年、スマホ、通信標準(5G)、EV・バッテリー、AIなどの分野で急速に拡大している理由は、国内企業同士に限れば、過去の特許紛争を解消することと、中国企業の海外展開という共通の戦略目標が背景にあります。日本はこの点、自社開発にこだわる企業文化の影響もあり、低調です。


  次に目につくのが前回紹介した谷業凱署名記事の裏付けとなる“先用后付”(使ってみてから、許諾料を支払う)モデルの広がりです。例えば、北京の首都師範大学はある発明特許を北京の某中小企業に“先用后付”で許諾しており、北京市では高等教育機関などがこの制度を中小零細企業に対し試験的に実施、北京信息科技大学は“先用后付”特許381件を一斉公開しています。広東省でも華南理工大学等が中心となって、2024年までに328件の特許を公表、許諾契約に至っています。この試みは、従来、中小零細企業にとって高い壁になっていた「前払いの高額ライセンス料」や、「技術の成熟度及び市場化可能性の不透明さ」を取っ払って利用しやすくなるメリットがあり、当面の急務である中小企業支援の画期的な試みとして期待されています。政府は2024年2月に<高等教育機関・科学研究機構所有特許活用方案>、<特許の産業化による中小企業成長計画促進事業方案>を打ち出し、一層の後押しをしています。


  一方で、政府は特許集約型産業の育成にも本腰を入れています。2024年、集約型産業は社会の7%に過ぎない就業者に全企業の50%近い研究開発費を投入、国内の発明特許の7割を生み、GDPの8分の一を占めるに至りました。一方、政府は、2025年5月から、<渉外知財権トラブル処理に関する規定>18条を打ち出し、外国とのトラブルから自国企業を守る姿勢も強化しています。不公平な待遇を受けないよう監視の目を光らせる規定に対し、外国企業は一層の注意が必要でしょう。  

 
 

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