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第1209回 ロボティックスの発展-その1-
(2026年3月5日)
日本では一般にロボット工学と言うロボティックスとは、要するに、「ロボットを設計・製作・制御して、実際の作業に応用するための学問・技術分野」で、AIに機械工学 ・電子工学 ・情報工学 などをブレンドした総合的な技術体系を指します。言い換えれば、ロボットの設計・制御・知能化(AI)を進め、それを様々なシーンに実用化し、応用していくことです。中国は、20世紀後半以降の情報技術とIT化の時代をベースに、21世紀に入ると長期的科学戦略を打ち建てて、21世紀中葉を新生物革命の時代と定義しました。新生物革命とは「実存人間」「サイバー人間」「生態模倣人間」「再生人間」と言う四種類の人間の存在を認めることであり、そこには、分子-細胞-器官-生物体の結合・統合関係を明らかにする分野、脳の様々なメカニズムを解明し、情報技術の革命的発展を推進する分野、生命操作能力の開発や再生工学の分野、脳とコンピュータ間の直接的情報交換や人のサイバー化に関する分野、実存人間の物理的代役を果たす「生態模倣人間」の分野などが含まれます。中国政府は2021年をこの新生物革命の時代への出発点として位置づけ、その第一歩として様々な形態のロボティックス開発に取り組み始めました。手始めは日本が得意としてきた工業ロボットで、自動車の溶接や組み立てはその代表例です。最近では半導体製造ロボットも活躍を始めています。しかし、ここ数年、こういった製造用ロボットの形態を突き破る様々な応用が急速に広がり始めました。機構学によるロボットの身体構造研究の進歩、制御工学による様々な動作の制御、センサー技術の発展による視覚・聴覚機能の飛躍的向上、更にまたAIの進歩による学習機能・判断能力の向上がその活用シーンを爆発的に広げたのです。
この結果、ヒト型をしたヒューマノイド、人と協力して働く協働ロボット、AIと身体を持ち、身体を通して学ぶ(“具身知能”)ロボット、操作されず自分で判断して動く自律ロボットが現実に姿を現しました。配膳ロボット・介護ロボットといったサービスロボット、手術をサポートする医療ロボット、自動運転車や配送ロボット、更にはドローンといった移動ロボットなどはその代表的事例と言えましょう。デジタルAIから物理AIへ、ヒト型ロボットから新生物革命へと突き進む中国、中国政府が掲げる新質生産力の中核をなすロボティックスへの取り組みは、各地方都市も巻き込んで、今、強力に推進されています。次回はその取り組みと成果を具体的に見てみましょう。

