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Last Update:2018/5/16
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コラム『チャイナウォール』-中国人の法意識-

第355回 民営教育促進法実施条例の改正
~私立学校に対する期待と規制

(2018年5月16日)

  中国教育部は、2018年4月20日に「民営学校教育促進法実施条例(中华人民共和国民办教育促进法实施条例)」改正案(パブリックコメント聴取稿)を発布した。原稿の条例に対して、31条に及ぶ修正のほか、19条を加筆、8条を削除するという大幅な改正案となっている。
  筆者は、(1)外資企業の学校教育への参入障壁を緩和し、(2)義務教育機関の民営化を推進することが適当であると考える。しかし、この改正案はこの点についてむしろ規制を強化している側面もあり、なお改善の余地があると考える。
  現行の民営学校教育促進法には、外商投資による民営学校に関する具体的規定はない。ただ、「中外合作学校経営条例(中外合作办学条例)」および「外国投資産業指導目録」などの行政法規及び部門規則に関連規定が見られるだけである。これに対して、改正案第5条は、「中国に設立された外資系企業および外国人が実質的管理者である社会組織は、義務教育を実施する私立学校を設立してはならない。その他類型の民営学校の設立については、国の外商投資に関する規定に適合しなければならない。」と規定している。
  この規定は、教育関連法の観点から民営教育に対する外商投資規制を確認する規定である。2017年版「外国投資産業指導目録」において、就学前、中等学校、高等教育機関に対する外商投資を制限し、ただ、中外合作に限って認めるとし、かつ、義務教育機関に関しては外商投資を全面的に禁止している。この指導目録のガイドラインを再確認する内容となっている。
  2017年9月に中国共産党中央弁公庁および国務院弁公庁は、「教育体制メカニズムの改革深化に関する意見」を発表した。この意見において、中国共産党及び政府は、都市と農村部の義務教育に格差(学校建設基準、教師編制基準、義務教育学校の在校生平均公用経費基準額などの側面における格差)があるという問題を意識し、この改善をしようとしている。とりわけ、農村部と貧困地区の教育の弱点を着実に改善し、農村部の教育の質向上に力を入れるとしている。
  改正案第9条は、現行法の「社会から資金を募って民営学校を設立してはならない」という規定を削除し、「創立者が法律に従って学校運営資金を調達する場合には、この資金は学校設立のために使用しなければならず、調達資金の使用状況を審査・許可機関に報告し、情報開示制度を確立しなければならない。」と規定している。この点については、民営学校の資金調達手段が広げるものと考えられる。そうであれば、外資企業などにもっと門戸を広げてもいいのではないか。外資企業は営利目的だけであるというのは誤りである。多くの多国籍企業は、CSRやESG投資に目を向けている。

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