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(2018年6月13日)
中国で「情報安全技術 個人情報安全規範」(以下、「個人情報安全規範」という。)が2018 年5 月1 日から施行された。この規範は、中国国家品質監督検査検疫総局と国家標準化管理委員会が共同で制定し、2017 年12 月29 日に発布したものである(全文は、https://www.tc260.org.cn/upload/2018-01-24/1516799764389090333.pdf#search=%27个人信息安全规范%27)。 この規範を制定した趣旨は、情報技術の急速な発展とインターネットの普及により、ますます多くの機関が大量に個人情報を収集、利用し、人々の生活に利便性をもたらしている一方で、同時に個人情報の不法な収集、濫用、漏えいなどの現象が多く、これに対して個人の合法的権益と社会公共の利益を最大限保障する必要があるとの考えによる。 2017 年に「中華人民共和国インターネット安全法」、「最高人民法院と最高人民検察院の公民の個人情報刑事事件の法律適用の若干の問題に関する解釈」が施行され、中国社会における個人情報穂木に関する関心度は非常に高まり、企業も個人情報の取り扱いについて一層注意を払う必要に迫られていた。 そこで、個人情報安全規範は、企業が個人情報を収集、保存、使用、共有、譲渡、開示する場合に注意しなければならない130 項目の措置についてのガイドラインを示した。この中には、個人情報の海外移転の要件について、個人情報の管理者は、個人からの明確な同意、法律の明文上の規定、または監督機関の同意がなければ、当該個人情報を海外に移転してはならないとの規定が設けられたことも注目されるところである。 個人情報安全規範によると、個人情報とは、電子またはその他の方法で記録される、単独またはその他の情報とともに特定の自然人の身分を識別するに足りるまたは特定の自然人の活動状況を反映する各種情報をいう。この情報には、姓名、生年月日、身分証明書番号、生理学的情報、住所、通信通話の連絡方法、通信記録、ID パスワード、財産状況、位置情報、居所、健康状況、取引情報などが含まれる。また、ひとたび漏えいや違法な提供または濫用され、さらにこれにより生命や財産の安全に危害が及び、個人の名誉、身体の健康に損害を与え、差別待遇を生むなどの恐れのある個人情報は、「個人敏感情報」(personal sensitive information)とされる。 個人情報安全規範は、さらに個人情報収集主体が、個人情報利用について当該個人から同意を得る方法、また、プライバシポリシーの作成モデルを示している。 以上のように中国において個人情報保護に対する意識が強まり、個人情報安全規範などが制定されている。しかし、現時点において個人情報保護法そのものが制定されていない状態であり、なお曖昧さがある点、企業は十分な注意が必要である。
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