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Last Update:2018/9/26
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コラム『チャイナウォール』-中国人の法意識-

第364回 貧困家庭支援の課題

(2018年9月26日)

  人力資源社会保障部は、2018年9月6日に2020年までに100万人の貧困労働力の就業を実現し、300万人を貧困から脱出させるという行動指針を示した(北京日報、2018年9月7日)。
  中国の貧困ラインは、2011年に定められたところでは一人あたりの年間所得が2,300元(不変価格)とされている。この貧困ラインに満たない貧困人口が、2017年時点で3,046万人いる。中国政府の定めた貧困ラインは、世界銀行の国際基準の約700ドル(2015年に2011年の購買力平価に基づき、1日1.9ドルと規定)のおよそ半分であり、この点を考慮すると貧困人口は中国政府発表の2倍はいると考えても良さそうである。
  人力社会保障部は、行動指針の中で貧困脱出のために、貧困労働者が職業教育を受講できるようにし、全ての貧困労働者が基本養老保険へ加入できるようにするなど社会保険を手厚くし、農村に帰って就労できるように公共事業などを農村部で実施するなどの措置を講じるとしている。
  国務院貧困者支援開発指導小組は、貧困脱出のためには、(1)教育問題、(2)基本医療の普及が重要であるという。例えば、「1人あたりの平均収入が5,000元であったとしても、子供1人が大学に通う場合、1年間で2~3万元を必要とするため、この収入ではとても無理だ。もし家族の1人が重病になった場合、その治療には3万から5万、深刻な場合は8万から10万元は必要となり、貧困脱出の基準に達していたとしても、決して貧困を脱却したとは言い切れない」からである(人民日報日本語版2017年3月10日)。
  教育部の発表によると、この6年間に全国で延べ5.2億人に8,864億元の学費支援をしたという(北京日報、2018年9月7日)。義務教育においては、教科書代など雑費を無料にし、貧困家庭には生活補助を支給し、一人の学生も家庭が貧困ゆえに教育が受けられないことのないようにするのが目標であるとしている。
  しかし、現実はどうであろうか。多くの農民工が夫婦で子供を帯同して都市に出稼ぎに出ていることは周知の通りである。この子供が都市の小学校に入学できるかというと、都市戸籍を持たないので入学が許可されない。そこで、やむなく農民工を受け入れる希望小学校(政府から公認されていない)に入学させている。この希望小学校は、政府からの補助金などもないので、農民工が少なくない学費を支払い、運営されている。貧困家庭は、義務教育も平等に受けられないという現状がありはしないだろうか。貧困家庭の子供が大学に進学するということは、何ら支援がなく、機会の平等もないところで、現実的には考えられず、そうであると貧富の格差がさらに拡大するのではないかと懸念する。貧困家庭の子供でも大学教育を受けられるようにする改革が求められる。

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