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Last Update:2017/2/8
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第325回 中国経済を押し上げるトランプの対外経済戦略

Trump’s external economic strategy to boost China’s economy

(2017年2月8日)

  トランプ米大統領の出現で、経済のグローバル化が終焉し、保護主義が台頭してきているように見える。トランプ米国大統領が嫌うニューヨークタイムズは、トランプは第2次世界大戦後から今日まで築いてきた世界の秩序を脅威に晒していると述べている(PETER S.GOODMAN, Trump’s Trade War May Have Already Gegun, New York Times 2017年2月3日)。
  このとき、世界の貿易・投資秩序は、どのような方向に舵を切ることになるだろうか。中国が米国に代わって盟主となる可能性も出てきた。なぜか。
  習近平国家主席は2017年1月17日に世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で演説し、「保護主義に対してはノーと断言する。」と述べた。習近平国家主席のこの発言は、半信半疑なところもあるが、総じてビジネスマンから総じて歓迎されている。李克強首相も、中国は自由貿易と安定的世界の貿易秩序を守ると述べている。
  そもそも、2015年に大連で開催されたダボス会議が閉幕した直後に国務院は、「開放型経済体制の構築に関する若干の意見」を発布している。この中で、中華民族の偉大な復興という“中国の夢”を実現する確固たる基礎を築くとしている。“中国の夢”の概念は、この意見の序文に見られる開放を以って改革、発展、イノベーションを促し、開放型の経済強国を建設することである。
  トランプ大統領は、習近平国家主席を世界の盟主に引き上げようとしているのだろうか。
  米国が保護主義に走る中、米国の主要なパートナーは、欧州も含めて米国以外の貿易及び投資対象国としてのパートナーを探し始めている。この主要なパートナーと目されるのが中国である。国連貿易開発会議(UNCTAD)の2016年世界投資報告書によると、中国は依然として世界で最大の投資対象国となっている。中国は“一帯一路”構想で沿線国への投資も促進しつつあるところである。
  さらに、トランプのイスラム国家の人々の米国入国を拒否するような手法は、中東諸国を結束させ、同時に民主同盟の基本的価値観を破壊しかねない(New York Times 2017年2月3日)。このことは、中国の“一帯一路”構想の進展を促すことにもなると思われる。米国の“北風”に対して、中国が“太陽”ともとられる。
  グローバル化が終焉し、ナショナリズムがこれに取って代わりそうである。“一帯一路”構想は、“中国の夢”=中華民族の復興を掲げるナショナリズムの最たるものと思っていたが、今や中国のナショナリズムの影が薄れそうである。

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