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Last Update:2017/4/12
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第329回 トランプ米大統領は習主席に対米投資を促すか

President Trump prompts President Xi to invest in the United States

(2017年4月12日)

  習近平国家主席とトランプ米大統領の首脳会談が、2017年4月6、7日に米フロリダ州の別荘で実現する。会談の争点は、米中貿易・投資、南シナ海、及び北朝鮮問題など非常に多い。
  どこまで具体的な議論されることになるのか判然としないが、米中投資に関してはどうであろうか。興味深いところだが、以下のような予測ができる。
  ベーカー&マッケンジーの調査によると、中国企業の対北米及びEU直接投資は2016年に942億ドルと過去最高金額となった。2015年に410億ドルであったので、1年間で2.3倍に増えたことになる。このうち北米向けが480億ドル(対前年比189%増)、EU向けが460億ドル(同90%増)であった。さらに、対北米投資の94%が米国向けである。投資主体は、国有企業よりも個人投資家であり、民間中国企業の投資が70%を占めている。
  米中貿易インバランス、米国の雇用拡大を主張するトランプ大統領は、習主席に対米投資をさらに促すことになるだろうか。
  現状の中国の対米投資についてみると、97%がM&Aによって行われている。不動産、ホテル、映画、娯楽関係が多かったが、中国政府としては製造業、情報通信、ソフト及び情報技術サービス分野への投資を促したいところである。
  これに対して、2016年に米国対米外国投資委員会(Committee on Foreign Investment in the United States =CFIUS)は、米国企業の経営権の「支配」につながる外国企業による買収案件を審査する中で、10件、590億ドルもの取引を認めなかった。非常に大きな金額であり、関係者を驚かすものであった。この限りにおいて中国政府の期待する対米投資は制約されそうである。
  では、米国は中国企業の対米投資を一切望まないかというと、必ずしもそうではない。雇用を創出するグリーンフィールド投資は分野にもよるが歓迎されることにはなる。そこで、米国はIT技術など高度な技術がM&Aにより流出するようなことは避けつつ、グリーンフィールド投資を増やせという要請をすることになるだろう。
  一方、習主席は、2017年1月の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で世界経済の融合、自由貿易のメリットを強調していたので、米中相互投資の融合を図ろうとすることになる。
  中国国務院は、2017年3月に「さらに社会分野への投資活力を奮起させることに関する意見」を発布した。これは、「新経済開放政策」とも言うべきもので、医療、シルバー(養老)、教育、文化、スポーツ(体育)の5分野(業種)への事業参入機会を外資企業を含む民間企業に拡大し、当該分野に参入する企業が資金調達及び土地利用をしやすくし、イノベーションを促していこうとするための施策を示したものである。周主席は、トランプ大統領に対して米国企業の対中投資を促す要請をする。

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