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Last Update:2017/2/22
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第326回 対外投資戦略の転換

The Transformation of Foreign Investment Strategy

(2017年2月22日)

  商務部は、2017年1月の中国の対外投資動向を発表した(経済参考報 2017年2月17日ほか)。この発表から、中国政府は、盲目的な対外投資ブームをある程度抑制し、中国経済に資する投資に集中するという新たな戦略を再構築しようとしていることが見えてくる。
  商務部の発表によると、1月の非金融分野の対外投資額は532.7億元(約77.3億ドル)で、対前年同期比35.7%の減少で、対前月比では4.6%の減少であった。ただし、直接投資分野の構成を見ると次のような特徴がある。
  不動産関係が84.3%減、文化・体育及び娯楽業関係が93.3%減であるところ、実体経済及び新興産業への投資に重点が移ってきている。製造業が79.4%増、情報通信、ソフト及び情報技術サービス分野が33.1%増であった。この分野は2016年1月には対外投資総額に占める割合が、それぞれ13.4%と5.6%であったのが、37.5%と11.5%へと増えている。装置製造業への投資は22.7億ドルと対前年同期比2.7倍となった。
  中国政府は、不動産、ホテル、映画、娯楽などの分野に対して盲目的かつ非理性的な投資が行われていることに対して、2016年12月に警告を発した。外国に進出する中国企業は、各種のリスクがあることを認識し、十分なフィージビリティ・スタディを行った上で投資をしなければならないということである。また、進出国の市場経済化の基盤や外資導入について規律する法の立法背景として存在する政治・経済体制、政策上の判断、また、一国の人々の法意識や外資(中国資本)に対する意識(警戒心や敵愾心)も意識せよということである。併せて、中国から外資が国外にむやみに流出することも防ぎたい意図もあるだろうか。
  米国外交関係学会(CFR)のデータによると、2016年の中国企業の対米・EU投資に関して、リスク・マネジメントの原因で企業買収が許可されなかった案件が金額にして750億ドル、2015年に比べて7倍、30件の買収案件が頓挫した(中国新聞網 2017年2月17日)。米国の対米外国投資委員会(Committee on Foreign Investment in the United States =CFIUS)は、米国企業の経営権の「支配」(持株比率如何にかかわらず、実質的に経営を支配する状況をいう。)につながる外国企業による買収案件を調査する権限を有している。この審査に引っかかったものがあるものと思われる。EUにおいてもハイテク関連企業の買収に待ったがかけられている。
  それでも中国は、今後とも装置産業、ハイテク産業分野への投資をリスク・マネジメントについて意識しなから増やす。また、新しい投資先として“一帯一路”沿線国(新シルクロード構想の周辺国)が注目されることになるだろう。当該地区への非金融分野の対外投資額は、国・地区別投資で10.6%を占めている。

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