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Last Update:2018/11/28
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コラム『チャイナウォール』-中国人の法意識-

第368回 新たな成長戦略を模索する中国

(2018年11月28日)

  中国経済は、超高度成長から新常態といわれる中高度成長期に移行している。この成長速度を維持することはもちろんであるが、量から質へと経済成長のあり方を転換したいというのが現政権の思惑である。このために、「中国製造2025」など新たな成長戦略を描いている。このとき、さまざまな成長リスクを予防しつつ、いかにバランスのとれた発展を図るかが重要な論点をなりつつある。
  「中国製造2025」については、いかに量から質への転換を図ることができるかが、深刻な問題となっている。
  中国の対外貿易(輸出)は増えているが、問題は、労働集約型産業の製品輸出(例えば、傘、アパレル、靴、玩具、家具など)がまだまだ主役であることである。技術・知識集約型の製品である自動車、半導体、コンピュータ、携帯電話、航空機などは、なお劣っている。アップルのiPhoneは中国で製造されているが、部品の大半は先進資本主義国から輸入されるもので、真の中国製造とはなかなか言い難い。まだ、中核的産業技術面では、先進資本主義国に比べて相当弱いというのが中国政府の考え方である。
  中国産業のグレードアップが不可欠である。このために中国政府は、企業に対して強いプレッシャーをかけているようである。少なからぬ中国企業が、日本企業を追い抜いたと自慢していたところ、最近になって再び日本企業に学びたいという発言が出てきたのは、こうした中国政府の意識の変化によるものである。
  「中国製造2025」を実現しようとする場合、先進技術を外国から学ぶということのほかに、現時点の課題は、金融問題、供給サイド改革、市場改革をうまく成長軌道に乗せられるかであろう。
  2018年11月9日に人民銀行は、「2018年第3四半期の中国通貨政策執行報告」を発表した。この中で、マネーサプライ(通貨供給量)M2は8%以上伸び、人民元の貸付残高は13.2%増で2017年同期比8,782億元も増えていると報告された。しかし、同時に民営企業、零細企業が融資を受けられずに経営難に陥っていることから、活力を強めるための対策が必要であるとの認識も示されている。そして、供給サイド改革を推進する必要性も併せて言及されている。
  民営企業の活力を強化しなければならないのだが、必ずしもうまくいっていないと言えそうだ。
  市場改革については、中国の経済学者からも法の支配、民主化を併せて行わなければならないという主張がなされているが、このことを現時点において中国政府・共産党は考慮する余地を有さないようである。このことは、外資の中国投資や技術供与を促し、中国の持続的成長を図る上での障害になるかも知れない。

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