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(2018年12月12日)
21世紀は、対立から対話の世紀になるというのは幻想であろうか。企業行為から生じる国際商事紛争、国際投資紛争が増えているのに加えて、国家間の貿易摩擦に端を発した対立が激化している。 競争関係にあったのが、対立関係に発展し、さらに戦いへと向かっている。こうした紛争の発現原因は、ビジネス上では、個人の資質、文化の違いを言葉の壁がさらに際立たせることにある。紛争がエスカレートすると、当事者が互いにある程度まで譲歩することでwin -winの関係を維持しようとするよりも、互いが自己の権利ばかりを主張し、相手を打ち負かそうとするwin - loseの関係に入る。このときの思考法は、 Zero-Sum Thinkingになっている。今、国家間でも指導者の資質により、win – loseを目指すことが多くなりつつある。一部の国家指導者は、地域的な考えを持って、グローバルに行動している。これでは、地球規模の利益衡量は図れない。 さて、国際投資紛争について、中国は固有の紛争予防メカニズムを構築したいという考えがあるようである。国際投資紛争解決方法として、中国に“一帯一路”投資仲裁センターの設置構想があることは、以前のコラム(第365回「“一帯一路”と貿易・投資紛争解決」)で紹介したが、では、紛争予防メカニズムについてはどのような考えがあるのか。 最近では、国際投資紛争予防について国際協力メカニズムを構築しようという動きが新興国および発展途上国の間で活発になってきている。これを中国が主導するかたちであると言えるかも知れない。 2017年9月に中国福建省廈門市で開催された第9回BRICS首脳会議は、「BRICS投資利便化合作綱要」(BRICS投資利便性協力綱要)を採択した。ここにおいて、国際投資紛争予防のために次のような措置を採るのが適当であるとしている。 (1)法律の制定や改正状況などに関して企業への政策情報提供・コンサルティングや各国の投資政策評価などを行い、投資政策の透明度を高める。 (2)投資関連行政の効率化を図り、投資許認可手続きを簡素化し、企業の投資に関わる行政コストの負担を軽減する。 (3)企業と行政の対話メカニズムを構築し、政府が企業の意見を傾聴するようにし、さらに各国の投資主管部門間の交流および政策的協調を促進する。 こうした主張は、WTOにおける国際投資利便性に関する改革にも反映されるものであり、国際投資紛争の未然防止策にもなり得るものと評価されるだろう。対立よりも対話、地球規模の利益衡量を考えることが肝要である。
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