コラムに関する感想
お問い合わせ
Last Update:2019/1/9
トップチャイナウォール
コラム『チャイナウォール』-中国人の法意識-

第371回 2019年の実体経済成長政策

(2019年1月9日)

  北京大学国民経済研究センターは、2018年12月25日までに6大発電所の石炭換算エネルギー消費は、前年同期比で3.5ポイント減少し、一方で工業生産付加価値は同5.6%増えたと発表した(経済参考報 2019年1月4日)。この発表は、中国の工業生産は堅調であり、かつエネルギー効率も向上させ、環境問題の改善も見られるということを表明したいようである。
  しかし、中国国家統計局の発表を見ると、今日の問題点が示されているようだ。国家統計局が2018年12月31日発表した同年12月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は前月に比べ0.6ポイント低い49.4だった。4カ月連続の低下で2年10カ月ぶりの水準に沈み、好不況の節目である50を割り込んだ。PMIをまとめた中国物流購買連合会は「経済の下押し圧力が大きい。今後もさらに強まるだろう」との見通しを示した(日本経済新聞 2019年1月1日)。
  中国政府は、かかる現状をいかに打破しようとするのだろうか。2019年の重要な施策として、(1)イノベーションの推進、(2)金融政策による企業の支援、(3)企業のコスト低減の実行、がキーワードになるようだ。
  イノベーションに関しては、cloudなどの大規模データをAI技術に活用し、情報技術を経済成長につなげたい考えである。しかし、世界貿易機関(WTO)がデータ利用ビジネスに関して、中国のデータ管理の独占、在中国外資企業のデータ利用規制などを念頭に、国際的なルール作りに動き始めた(日本経済新聞 2019年1月3日)。これにより、中国政府・企業は、何らかの制約を受けることになるかも知れない。
  上記の実体経済のイノベーションは、金融機関の融資無くしては難しい。中国人民銀行(中央銀行)は、民営企業への融資を拡大する方針を示した。そして、中央銀行は、金融機関の預金準備率を2019年1月に1ポイント下げる決定をした(経済日報 2019年1月4日)。しかし、国有企業重視の趨勢の中で、本当に民営企業に融資がなされ、民間企業の活性化が図れるか、なお疑わしい。
  国家発展改革員会の何立峰主任は、公平な競争がなされる市場環境を形成し、民営企業の発展を支持し、コストを大いに低減させなければならないと述べている(経済参考報 2019年1月3日)。市場経済が、経営資源の適正配分をするということは、中国でも強く認識され、はるかに前から言われ続けていることであるが、実現できていない。むしろ最近では、逆行しているようにも見える。民間企業のコストの中で多くは行政コストとみなされるものである。政府部門の制度及び意識改革がなければならない。
  それとも、米中貿易摩擦が激化するところ、計画経済体制に回帰し、自力更生の発展の道を進もうとするのだろうか。

※サイトの記事の無断転用等を禁じます。


© Copyright 2002-2016 GLOVA Reserved.  
"chinavi.jp" "ちゃいなび" "チャイナビ" "中国ナビ"はGLOVAの商標です。
s